発散防止抑制装置とは?局所排気装置との違いについても解説!
2026.02.xxに公開
工場や作業場、研究施設などで有害物質を扱う現場では、作業者の健康を守るために「局所排気装置」の設置が欠かせません。しかし、局所排気装置と一口にいっても種類は複数あり、どの方式を選ぶべきか分かりにくいと感じる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、局所排気装置の基本的な仕組みから種類ごとの特徴、関係する法令、正しい運用方法までを解説します。この記事を読むことで、局所排気装置の基本的な役割や種類の違いを正しく理解できるようになるでしょう。
局所排気装置とは?

局所排気装置とは、作業中に発生する有害物質を作業場全体に拡散させる前に、発生源の近くで集中的に捕集し、屋外へ排出するための設備です。作業場の一部で粉じんや有機溶剤の蒸気などが発生すると、そのままでは空気中に広がり、作業者の健康に悪影響を及ぼすおそれがあります。
局所排気装置は、こうした汚染空気を発生箇所にとどめることで、作業環境全体への影響を最小限に抑えられるのです。特に薬品や有害物質を扱う実験室や研究施設、製造現場などでは、法令により設置が求められるため、安全な作業環境を維持するうえで重要な役割を担っています。
局所排気装置の種類
局所排気装置には以下の3種類があります。
- 囲い式
- 外付け式
- プッシュプル型換気装置
それぞれの特徴について見ていきましょう。
囲い式

囲い式の局所排気装置は、作業空間そのものをフードで囲い込む構造が特徴です。ブース型とも呼ばれています。汚染物質が発生する箇所の三方向を囲うことで、粉じんや有機溶剤の蒸気が周囲に拡散するのを防ぎ、内部に設けられた吸引口から効率よく排気します。
発生源を物理的に囲うため、外部への漏れが起こりにくく、効率よく空気を屋外に排出できる点が大きなメリットです。作業スペースが限定されるため、作業内容が固定されている工程や、汚染物質をできる限り外部に漏らしたくない作業に適しています。
外付け式

外付け式の局所排気装置は、可動式アームを備え、汚染物質が発生する位置に吸引口を直接近づけて使用するタイプです。囲い式のように作業空間を覆う構造ではないため、作業の自由度が高く、作業者が動きながら行う工程にも対応できます。
吸引口の配置によって、側方吸引型、上方吸引型、下方吸引型に分類され、それぞれ作業姿勢や有害物質の性質に応じて使い分けが必要です。発生源に素早くアプローチできる反面、吸引位置がずれると捕集効率が低下するため、正しい位置調整と運用が重要となります。
プッシュプル型換気装置

プッシュプル型換気装置は、吹き出し(プッシュ)と吸引(プル)を組み合わせて気流を制御する換気方式です。単に空気を吸い込むのではなく、意図的に気流をつくることで、有害物質を効率よく吸引口へ導く点が特徴です。
プッシュプル型換気装置は以下の3種類に分類されます。
- 密閉式(送風機あり):換気エリアが密閉され、送風機によるプッシュ気流を利用して床上約1.5mで換気を行うタイプ
- 密閉式(送風機なし):換気エリアは密閉されているが、プッシュ気流を持たず吸引のみで換気するタイプ
- 開放式:換気エリアが開放されており、密閉されていないタイプ全般
囲い式や外付け式と比べると、必要な制御風速が低く、排気量を抑えられる点がメリットです。一方で、周囲の送風や人の動きによる気流の影響を受けやすく、条件によっては拡散抑止効果が低下するという注意点もあります。
発散防止抑制装置との違いは?
局所排気装置は、有機溶剤や特定化学物質を取り扱う作業環境において、設置が義務づけられている装置です。給気口やフードで有害物質を発生源近くから吸引し、ダクト、空気清浄装置、排風機を経て、最終的に屋外へ排気する構造となっています。
一方、発散防止抑制装置は屋外へ排気するダクト設備を持たない装置のことです。有機溶剤をフィルターなどで吸着して分解し、濃度を下げる役割があります。
発散防止抑制装置は、局所排気装置が設置できない環境において一定の要件を満たすことで設置できる装置です。ただし、第2種有機溶剤や特定化学物質第2類物質等を取り扱う場合は、装置を設置した後に「特例実施許可申請」を申請しなければなりません。
局所排気装置に関係する規則
局所排気装置は、作業者の健康と安全を守るために、さまざまな法令や省令に基づいて設置や運用が定められています。ここでは、局所排気装置に関係する主な規則について見ていきましょう。
有機溶剤中毒予防規則
有機溶剤中毒予防規則は、有機溶剤の蒸気を吸入することによる中毒や健康障害を防止する目的で定められた規則です。対象となる有機溶剤は第1種から第3種まで分類されており、44種類が規制対象とされています。
これらを使用する作業では、蒸気が作業場内に拡散しないよう、局所排気装置による適切な排気対策をしなければなりません。
また、以下の項目についても義務付けられています。
- 作業環境測定の実施
- 装置の性能維持
- 定期点検
- 作業者の健康診断など
このように、設備面と運用面の両方から健康被害を防ぐことが重要とされています。有機溶剤を扱う現場では、この規則を正しく理解し、確実に遵守することが不可欠です。
引用:e-Gov|有機溶剤中毒予防規則(昭和四十七年労働省令第三十六号)
特定化学物質障害予防規則
特定化学物質障害予防規則は、がんや慢性障害など重篤な健康被害を引き起こすおそれのある化学物質から作業者を守るための規則です。
規則では、ベリリウムなどの特定化学物質やその粉じんを取り扱う作業場所において、発散源を密閉する設備や局所排気装置、またはプッシュプル型換気装置の設置を義務付けています。
有害物質が作業空間全体へ拡散するのを防ぎ、作業者の吸入リスクを低減します。特定化学物質障害予防規則に違反すると、行政指導や3年以下の懲役または50万円以下の罰金などを受けることがあるため注意が必要です。
引用:e-Gov|特定化学物質障害予防規則(昭和四十七年労働省令第三十九号)
粉じん障害防止規則
粉じん障害防止規則は、粉じんを吸入することによって発生する健康障害を防止するための規則です。粉じんによる健康被害は現在も発生しており、事業者には作業環境の改善が強く求められています。
粉じんによる健康被害を防ぐため、事業者は労働者に対して健康診断を行うとともに、必要に応じて作業場所の変更や作業内容の転換、作業時間の短縮などを行い、適切な健康管理措置を講じるよう努めなければなりません。
引用:e-Gov|粉じん障害防止規則(昭和五十四年労働省令第十八号)
局所排気装置等の正しい使用方法
まずすべての装置に共通するポイントとして、以下を必ず押さえておきましょう。
- 電源の確認: スイッチが入っているか(動いているか)を必ず見る。
- 気流の確認: 実際に空気を吸い込んでいるかを確認する。
スイッチが入っていないまま作業を開始する、吸い込みが弱い状態に気付かないといった初歩的なミスは、現場で意外と多く見られます。安全な作業環境を維持するためにも、基本動作の確認を習慣化しましょう。
囲い式の正しい使い方
まずは適切な「制御風速」が確保されているか、定期的に確認しましょう。制御風速とは、有害物質を吸引するために必要となる風速のことで、囲い式フードではフード開口面上の風速を表します。
適切な制御風速が確保されていても、開口部を必要以上に開けたまま使用すると、局所排気装置の外へ有害な化学物質が漏れ出すおそれがあります。その結果、作業者が想定以上の曝露を受けてしまう可能性も否定できません。
安全性を確保するためにも、開口部は作業に必要な最小限の範囲にとどめて使用することが重要です。
外付け式の正しい使い方
囲い式と同様に、外付け式フードでも適切な制御風速が確保されているかを定期的に確認することが重要です。外付け式の場合、制御風速とはフード開口面から最も離れた作業位置における風速を指します。
実際の作業現場では、フードから離れた位置で作業してしまい、十分な制御風速が確保されていないケースも少なくありません。制御風速の確認に加え、フードにできるだけ近い位置で作業すること、顔を不用意に近づけないことを徹底しましょう。
プッシュプル型換気装置の正しい使い方
プッシュプル型換気装置では、作業者の立ち位置が重要になります。発生源から吸引口までの風下側に立つと、汚染空気を直接吸い込むことになるため避けなければなりません。
また、吹き出し側を背中や物で塞いでしまうと、気流が乱れて拡散抑制効果が低下します。外付け式と同様に、扇風機や空調の風が装置の気流に影響を与える点にも注意が必要です。
外付け式の局所排気装置と同様、プッシュプル型換気装置についても気流の乱れに注意しましょう。
局所排気装置を設置する際の注意点
局所排気装置を設置する際は、特に次の点に注意しましょう。
吸引したい物質と作業環境に合った装置か確認する
局所排気装置の種類によっては向き不向きがあります。有機溶剤の種類や発生源の位置、作業内容を考慮し、適切な方式を選定することが重要です。
地域で定められた排気方法を確認する
自治体によっては、排気の方向や屋外排気方法が条例で定められている場合があります。導入前に必ず確認しましょう。
管轄の労働基準監督署へ届出を行う
局所排気装置の設置時には、工事開始の30日前までに労働基準監督署に届け出ることが義務付けられています。設置後は、年1回の定期検査とその記録は3年間の保管が必須です。
局所排気装置を導入する流れ

局所排気装置は、作業内容や使用する化学物質、法令要件を踏まえたうえで、段階的に導入を進めることが重要です。正しい手順を踏むことで、安全性の確保はもちろん、無駄な追加工事や是正指導のリスクも防げます。
ここでは、局所排気装置を導入する一般的な流れを解説します。
1. 専門家へ相談
まずは、局所排気装置メーカーへ相談しましょう。使用している有機溶剤や粉じんの種類、作業方法によって、必要な装置の種類や性能は大きく異なります。
自己判断で選定すると、法令を満たさない装置を導入してしまう可能性があるため、初期段階で専門家の知見を取り入れることが重要です。
2. 現地調査や計画立案
次に、実際の作業場を確認する現地調査を行います。発散源の位置、作業者の動線、設置スペース、既存設備との干渉などを確認し、最適なフード形状や排気方式を検討します。
同時に、有機則や特化則などの法令要件を踏まえた設計計画を立案し、必要に応じて労働基準監督署への届出準備も進める段階です。
3. 設置と構築
計画内容に基づき、局所排気装置の設置工事を行います。フードやダクト、ファン、空気清浄装置などを適切に配置し、設計どおりの性能が発揮できるよう構築します。
設置後は、気流や制御風速が基準を満たしているか確認し、不備があれば調整を行います。この工程は装置の性能を左右する重要な段階です。
4. 作業者への教育
装置を設置しても、正しく使用されなければ効果は発揮されません。作業者に対して、電源確認やフード位置の注意点、やってはいけない使い方などをしっかり教育します。
特に、顔の位置や開口部の扱いなど、日常作業での注意点を共有することで、想定外の曝露リスクを防ぐことが可能です。
5. 定期的なメンテナンス
局所排気装置は、設置後の維持管理も重要です。年1回以上の自主検査を実施し、制御風速や装置の異常がないかを確認します。
フィルターやファンの劣化を放置すると、排気性能が低下し、法令違反につながる恐れもあります。定期的な点検と記録管理を行い、安全な状態を維持しましょう。
局所排気装置に関するよくある質問(FAQ)
局所排気装置については、設置ルールや運用方法、点検・届出など、導入前後で多くの疑問が生じやすい設備です。ここでは、現場でよく寄せられる質問を中心に、基本的なポイントをわかりやすく解説します。
局所排気装置を導入するにはどのくらいかかりますか?
ドラフトチャンバーの場合、本体は約200万〜400万円が目安です。ダクト・電気・給排水工事などを含めると、総額で数百万円規模になるケースが一般的です。
局所排気装置の点検はどこに依頼すればいい?自分でできる?
局所排気装置の点検は専門業者に依頼するのがおすすめです。局所排気装置は、年1回の自主検査と記録保存が義務付けられています。
形式的な確認だけでなく、法令基準を満たしているかを正確に判断する必要があるため、現場担当者が完璧に対応するのは難しいのが実情です。日常点検として「動作確認」や「異音の有無」を確認することは可能ですが、法定点検や性能測定は専門業者へ依頼することで、法令違反や測定ミスのリスクを防げます。
局所排気装置の届出とは何ですか?
局所排気装置の届出とは、取り扱う薬品の種類によって、装置の設置や移設、主要構造の変更を行う際に、事前に労働基準監督署へ提出する手続きのことです。労働安全衛生法や労働安全衛生規則に基づき、対象となる場合は工事開始の30日前までに「機械等設置届」を所轄の労働基準監督署へ提出する必要があります。
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局所排気装置は、有害物質から作業者の健康を守るために欠かせない装置です。囲い式・外付け式・プッシュプル型換気装置といった種類ごとに特徴や適した作業環境が異なるため、作業内容や発散源の性質に応じた適切な選定が重要となります。
この記事を参考に、自社の作業内容や取り扱う物質に適した装置を正しく理解し、安全で法令遵守の作業環境づくりを実現しましょう。